第17回日本再生医療学会総会
2018年3月21日~23日まで第17回日本再生医療学会総会がパシフィコ横浜で開催された。日本再生医療学会は「革新的医療として再生医療を国民に安全に有効に迅速に届ける」ことを理念に2001年に設立され、「再生医療推進法」や、薬事法の「医薬品医療機器等法」の改正、「再生医療等安全確保法」の法制化に働きかけ、日本で安心・安全な再生医療を普及することを推し進めている学会である。
今回、3月21日にNPO法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー(F.M.L.)に所属する医師が関わった2演題の口演が行われた。
多血小板血漿(PRP)を用いた毛髪再生への試み
筆頭演者:住江玲奈(聖マリアンナ医科大学形成外科学講座) 共著者:小山 太郎¹、曽我 茂義²、波間 隆則³、脇坂 長興⁴、新本 弘²、小林 一広¹、井上 肇⁵ / ¹メンズへルスクリニック東京、²防衛医科大学校放射線科講座、³アンファー株式会社 開発部、⁴聖マリアンナ医科大学 形成外科・幹細胞再生医学(Angfa寄附)講座、脇坂クリニック大阪、⁵聖マリアンナ医科大学 形成外科・幹細胞再生医学(Angfa寄附)講座
多血小板血漿(PRP)は、血小板を濃縮した血漿のことで、組織再生に働きかける成長因子が多く含まれており、口腔外科や整形外科、形成・美容外科の分野で広く応用されている。
今回、聖マリアンナ医科大学と、NPO法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー(F.M.L.)に所属する医師、アンファー株式会社は、頭皮にPRP投与が及ぼす影響と発毛への効果を検証するため、防衛医科大学校放射線科学講座の曽我先生との共同研究で、PRPを投与した患者の頭部をMRIで撮影して頭皮の変化を解析し、その結果を発表した。
PRPは頭皮環境改善などにより現状のAGA治療 (ミノキシジルやフィナステリド等による治療)の効果を高める可能性があると、住江先生は述べた。
毛髪とメカノバイオロジー~脱毛症におけるメカノセラピーの可能性~
筆頭演者:小山 太郎 / メンズヘルスクリニック東京、日本医科大学 形成外科 共著者:波間 隆則¹、高田 弘弥²、小林 一広³、小川 令² / ¹アンファー株式会社、²日本医科大学 形成外科、³メンズヘルスクリニック東京
血流にさらされている血管内皮細胞、収縮弛緩する血管平滑筋細胞、荷重のかかる関節の軟骨細胞、拍動する心筋細胞、生体内の細胞は各所で各々固有の物理刺激にさらされている。
物理刺激を感知した細胞は、これに様々な遺伝子発現で応答している。これらを研究する学問がメカノバイオロジーである。皮膚には常に張力が発生している。これまでの創傷治癒研究により、皮膚を構成する表皮細胞、真皮細胞についてはメカノバイオロジーの知見が多く得られているのに対して、皮膚付属器である毛髪についてはまだその研究は少ない。
小山医師はこれまでの日本医科大学形成外科との共同研究を中心に、物理刺激が毛髪に及ぼす影響について遺伝子発現、イオンチャネルの開口という視点で発表した。本研究を進めることで将来、脱毛症に対する治療機器の開発を目指していくと語った。