学会・論文

第1章 11th Annual Meeting of the SHSR Joint with KHRS (第11回毛髪科学研究国際学会) 2003年11月

表題:
Relation of androgen receptor gene polymorphism and male pattern baldness.
(アンドロゲンレセプター遺伝子多形と男性型脱毛症の関係)

発表日: 2003年11月29日

場所: 韓国(済州島)

講演者: 脇坂 長興


アンドロゲンレセプター遺伝子の塩基配列の繰り返し部分が短い人は男性型脱毛症になりやすい

Interviewer
先生はF.M.L.きっての勉強家と聞いています。済州島で開催された毛髪科学研究国際学会では、どのようなことを発表されたのですか??

 

脇坂先生
ありがとうございます。F.M.L.には優秀な先生方がたくさん所属なさっていますよ。
では先ず男性型脱毛症についてお話ししましょう。男性型脱毛症は男性だけでなく女性にも出てくる薄毛です。これにはなりやすい人となりにくい人がいます。なりやすい人は若い時から頭髪が薄くなって、特有の形で薄毛になってきます。反対にかなり歳をとっても薄毛にならない人がいます。

Interviewer
薄毛は体質によるということですか?

脇坂先生
その可能性を考えた私たちは、体質に影響する遺伝子を調べてみることにしました。そうしたところ、アンドロゲンレセプター(男性ホルモン受容体)遺伝子、これを省略してAR遺伝子といますが、そのAR遺伝子の真ん中に特徴があることが分かりました。というのは、ある塩基の並びが短い人は男性型脱毛症になりやすかったのです。

Interviewer
「ある塩基の並びが短い」とはどういうことでしょう。

脇坂先生
AR遺伝子は92万個ほどの塩基が鎖のようにつながって構成されていますが、その中ほどにCAGとかGGCという3つの塩基配列が繰り返している部分があります。その繰り返しの回数には個人差があり、繰り返し部分が長い人と短い人がいることが知られています。

Interviewer
AR遺伝子の真ん中にCAG・CAG・CAG…とかGGC・GGC・GGC…といった塩基が並んでいるということですね?

脇坂先生
その通りです。このような「繰り返し塩基の並びが短い人は男性型脱毛症になりやすい」という傾向があることは、オーストラリアのエリス先生が発表していました[1]。しかし、大勢の患者さんについて調べて確実な違いを見つけたのは私たちが初めてでした。
そのことを国際学会で発表したところ、大きな反響がありました。それまでは、脱毛症のような「命取りにはならない病気」の原因を調べるために患者さんのDNAから遺伝子を調べるという発想はなかったのです。

Interviewer
最先端の研究だったんですね。
ところで、その発表を聞いたブルーム・ペイタヴィー教授(第4回国際毛髪研究学会会長)から、「ベルリンで開催される次回の第4回国際毛髪研究学会にぜひ参加してほしい」というお誘いがあったと聞いております。次回の学会に向けて、どの様な研究をなさる予定でしょう。

脇坂先生
次の学会ではさらに面白い発表ができるよう、ベルリンの学会までに新事実を見つけるために、色々な角度から調べてみるつもりです。
私たちのクリニックではすでに4年ほど前から薄毛治療薬「ミノキシジル」や「フィナステリド」を使った治療を始めています。ところが、治療してみるとそれらの薬が少量で効く人と大量に使ってもそれほど効かない人がいることが分かってきました。まずはそのような人たちの遺伝子を調べてみようと考えています。

Interviewer
面白い結果が出ることを期待しています。頑張ってください。

脇坂先生
ありがとうございます。頑張ります。

Interviewer
本日はどうもありがとうございました。


【Reference】
[1] Ellis J. A., Stebbing M., Harrap S. B. Polymorphism of the androgen receptor gene is associated with male pattern baldness. J Invest Dermatol. 2001 Mar;116:452-455,2001.


上記文章はFMLの見解に基づくものであり、内容の正確性・完全性・有用性を保証するものではありません。また、その利用に当っては一切の責任を負いかねます。 > サイトポリシーへ

お問い合わせ

当サイトへのお問い合わせを承ります。

お問い合わせ

更新情報
Copyright(C)NPO F.M.L. All Rights Reserved.
RSS RSSについて プライバシーポリシー サイトポリシー