学会・論文

第2章 4th Intercontinental Meeting of Hair Research Societies (第4回国際毛髪研究学会) 2004年6月

表題:
Effectiveness of finasteride on patients with male pattern baldness who have different androgen receptor gene polymorphism. 
(異なったアンドロゲンレセプター遺伝子の多型性を有する男性型脱毛症患者に対するフィナステリドの効果)

発表日: 2004年6月17日~19日

場所: ドイツ(ベルリン)

講演者: 小林 一広

 2004年6月にドイツのベルリンで4th Intercontinental Meeting of Hair Research Societies (第4回国際毛髪研究学会) が開催されました。F.M.L.理事の小林一広先生が本学会で学会賞を受賞されたので、今回はその発表内容についてご紹介します。


アンドロゲンレセプター遺伝子の塩基配列の繰り返し部分の長さがフィナステリドの有効性に関係する

Interviewer
学会賞の受賞おめでとうございます。

小林先生

ありがとうございます。自分でも予想以上の反響に驚いています。

Interviewer

本日は発表の内容についてお伺いしたいと思います。まずは、今回の発表の経緯についてお聞かせ下さい。

小林先生
前回の国際学会で脇坂先生が、「アンドロゲンレセプター(Androgen receptor: AR)遺伝子の中ほどにあるCAGとかGGCという塩基の繰り返しが短い人は、男性型脱毛症になりやすい」という発表をしたところ、大きな反響がありました(第1章参照)。その発表を聞いた今回の学会長ブルーム・ペイタヴィー教授から本学会参加のお誘いがあり、更に研究を進めて参加させて頂くことになりました。

Interviewer

学会長から直々に参加のお誘いがあるとは素晴らしいですね。

小林先生
これまでは脱毛症のような「命取りにはならない病気」の原因を調べるために患者さんのDNAから遺伝子を調べるという発想はありませんでしたから、我々の研究内容に興味を持って頂けたのではないでしょうか。大変光栄なことです。

Interviewer

では、今回の研究テーマに至った経緯についてお聞かせ下さい。

小林先生

私たちのクリニックではすでに 1997年頃から「ミノキシジル」と「フィナステリド」という薬を使って治療を始めていました。それまでの薬と違って、これらの新薬はかなりよく効きました。ところが、治療してみると少量のフィナステリドで効く人と大量に使ってもそれほど効かない人がいることが分かってきました。そこで、488名の患者さんに協力して頂き、フィナステリドの有効性と遺伝子配列の関連性を調べてみることにしました。

Interviewer
フィナステリドというと、飲むAGAの薬と言われていますよね。その様な薬剤の効き目と遺伝子の配列に何か関係があるということでしょうか?

小林先生
はい。研究の結果、AR遺伝子中央のCAGやGGCという塩基の繰り返し配列が短い人はフィナステリドが良く効くということが分かりました。前回の脇坂先生の発表内容と関連付けて言うのであれば、「AR遺伝子中央の塩基の繰り返し配列が短い人は男性型脱毛症になりやすいけれど、フィナステリドが良く効いて男性型脱毛症の進行が止まる」ということになります。

Interviewer
なるほど、非常に面白い結果ですね。この結果は今後治療方針を選択する際に活かせそうですね。

小林先生
その通りです。フィナステリドが有効かどうかは、通常は薬を半年以上使ってみないと確認できません。ところがAR遺伝子の配列を調べることで、フィナステリドが効くかどうかをあらかじめ予想できるようになるのです。

Interviewer
患者さんにとってもうれしい研究結果ですね。学会賞の受賞は事前に知らされていたんですか?

小林先生
いいえ、全く知らされていませんでした。学会の最後に、5つのグループの発表者が呼び出されたのですが、その中に私達の名前が入っていた時は驚きました。他にも、ドイツ、アメリカ、フランスなどのグループが受賞をしていました。

Interviewer
日本人では先生だけだったのですね。素晴らしい成果ですね。

小林先生
Gakkai02_02 ありがとうございます。しかしこれは私だけの成果ではなく、F.M.L.全体のドクターや看護師さん、事務の人たち、それに協力して下さった患者さんがあってのことです。私だけでは到底こんなにたくさんの患者さんのデータを集めることはできませんでした。
あるドイツの大学の教授は「こんなに大勢の患者さんについて遺伝子検査して、それをまとめることは私たちのような大学ではなかなか難しい。あなたの臨床グループはうらやましい」とおっしゃっていました。

Interviewer
なるほど。F.M.L.のみなさんの成果ということですね。本日は非常に分かりやすいお話ありがとうございました。

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